大判例

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札幌高等裁判所 昭和30(う)29 高裁判例

主 文

原判決を破棄する。

被告人を懲役六月に処する。

但し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

被告人を執行猶予期間中保護観察に付する。

原審の訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人高岡次郎の控訴趣意は同人提出の控訴趣意書記載のとおりであるから之を

引用する。

弁護人の控訴趣意第一点について(事実誤認)

原審認定の本件犯罪事実は、原判示、日時、A方に於て同人所有の袋入精粳米一

斗及び袋入同二斗を窃取したと謂うにあるが原判決挙示の証拠其の他一件記録によ

れば、原判示日時、場所において、被告人は先ず袋入精粳米一斗を窃取して之を屋

外に持ち出し更に他の精粳米二斗入の袋に手をかけ、之を窃取せんとしたとき前記

Aに発見誰何されたため、その侭屋外に飛び出し、先に持出した精粳米一斗も屋外

に放置した侭逃走したものであることが認められる。以上の事実であるから、前者

はすでに一旦屋外に持ち出し之を所有者の支配から自己の支配内に移したものであ

り、窃盗の既遂と謂うべく、後者は窃取行為に着手したが自己の<要旨>支配内に移

す以前に発見され逃げ出したのであるから窃盗の未遂であると云わなければならな

い。而して、本</要旨>件のように単一意思に基く同一日時、同一場所における同様

手段による数次の窃取行為は之を単純一罪と認むべきであり、斯る事犯において目

的物の一部につき既遂、他の一部について未遂に終つた場合は全体を通じて窃盗既

遂の一罪として処断すべきものと解するを相当とする。従つて原審が袋入精粳米二

斗をも既遂と認定したのは明かに事実の誤認であるが、結局両者を合し既遂の一罪

として処断したものであるし、本件に於て斯る程度の事実の誤認は判決に影響を及

ぼすものとは認められない。論旨は理由がない。

同第二点について(量刑不当)

本件犯罪事実は原判決挙示の証拠によつて認めらるるとおり、被告人は昭和二十

九年十二月二十日午前一時頃函館市a町b番地B内A方において同人所有の袋入り

精粳米一斗を窃取し、更に引続き袋入同米二斗をも窃取せんとし、これに手をかけ

た際右所有者に発見され目的を果さず逃走したものであつて情状必ずしも軽いとは

云い得ないのであるが、原審で取調べた証拠によれば、本件犯罪は計画的でなく、

突嵯的であり、直ちに発見されたため実害も全くなかつたのであつて、被告人の改

悛の情も亦認めらるるのであるし、其の他記録上窺われる諸般の情状によると、原

審が懲役六月の実刑に処したのは、被告人が先に窃盗罪によつて懲役一年に処せら

れ刑の執行猶予中であるとはいえ量刑重きにすぎるものと認めらるる。論旨は理由

がある。

よつて刑事訴訟法第三百九十七条第一項、第三百八十一条によつて原判決を破棄

し、同法第四百条但書によつて当裁判所で更に判決する。

被告人の犯罪事実は前述の通りであり、証拠は原判決挙示のとおりであるから之

を引用する。

被告人の所為は刑法第二百三十五条に該当するので、所定刑期範囲内で被告人を

懲役六月に処する。被告人は昭和二十八年三月二十日札幌地方裁判所小樽支部で言

渡され、同年四月確定した懲役一年の刑の執行猶予中ではあるが、前記の如く情状

特に憫諒すべきものがあるから刑法第二十五条第二項によつて本判決確定の日から

三年間右刑の執行を猶予し、同法第二十五条の二第一項後段により右猶予期間中被

告人を保護観察に付し、原審の訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文によ

り被告人に負担させることとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西田賢次郎 裁判官 山崎益男 裁判官 中村義正)

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